浅草寺を後にして、両国に有る「江戸東京博物館」へ移動しました。
入場すると江戸情緒溢れる展示にPaulとJohnaは驚いていました。
二人は書物で日本の歴史や史跡の勉強をしていたらしく、有る程度日本の文化を理解していられたようですが、昔の着物や衣類、生活雑貨、書籍が展示されているのを熱心に見入っていました。
一番印象に残ったのは「戦時中の東京」の庶民の様子が展示されていたコーナーでした。
窓ガラスに飛散防止用に白いテープを張り、電灯に黒い布を巻きつけ明かりを漏らさないようにしてあるジオラマのところで、Paulは私に「なぜ、こんなことをしていたのか?」と不思議そうに聞いてきました。
私は「アメリカ軍の偵察機が夜間東京の上空に来たときに、見つからないように黒い布で覆っていたのです......」
と言うと、Paulは驚きました。
そして「そこに居た民間人はどんなに恐ろしかったのだろうね...」と悲しい顔で私を見つめました。
「そうね、怖かったのでしょうね.....」と小さな声で返事をしました。
三人で黙ったままそのコーナーを後にしました。
実は第二次世界大戦の時、Paulは米国軍のパイロット教官をしていたのです。
Paul自身は参戦はしていません。母国の基地で大勢の若き優秀なパイロットを育成していたのです。
きっと、Paulの胸の内は複雑な思いが有ったことでしょう。
別の場所を見学中に私は「さっきの戦時中のコーナーだけど、あのような庶民の家庭生活はどう感じたの?」
とさりげなく聞くと、「本には載っていないリアルな情景だったよ、日本の国民があのような暮らしをしていたのかと思うと胸が熱くなったよ......どこの国も戦争は二度と起こしてはいけないね.....」と優しく微笑みながら返事をしてくれました。そして、ぎゅっと私の手を握りました。
彼の心と頭の中には走馬灯のごとく様々な時代の映像が流れたように感じました。
戦時中の映像も.......
さて、その後は電車で移動し歌舞伎座をご案内しました。
二人は歌舞伎の歴史については、熱心に勉強されていました。
歌舞伎座の正面で記念写真を撮っていると、「記念写真を撮っている私達」を撮影している団体のおば様たちがいました。
私は微笑ましくなり声を掛けて聞いてみました。「こんにちは、なぜ私達を写真に撮りましたか?」と聞くと、
「こんな背の高い映画俳優みたいな外人さんを、目の前で見たことがないがら、東京さ来た記念に撮らせてもらったダヨ!!」と大きな声で答えられると、周りのおば様方が一声に大笑いしてみんなも頷いていました。
「そうだったのですか、では皆さんとご一緒に撮りましょうか?」と聞くと「えー、こんなオババとは駄目だよ~。」と照れまくったので、その場はまたみんなで大笑いでした。
民間の国際交流と言うのはこんな時なんですね。ほのぼのとしました。
PaulとJohnaは大勢のおば様たちと握手をして歌舞伎座を後にしました。
続きはまたいつか.........