ご家族・ご友人や知人がご逝去なされた時に、残されたご家族や奥様、ご主人様に対して........
「悲しみは月日が癒してくれるから、どうかお気を落とさぬように.....」などの励ましのお言葉を掛けられます。
深い悲しみに接したとき、確かに月日が心を癒してくれるということを理解するのにどれだけの人々の経験から
そう言われるようになったのでしょうか......
過日、知人の悲しかった過去の出来事を伺う機会が有りました。
その方は、若いとき結婚し、直ぐにお子さんが生まれ幸せな日々を数年過ごしていました。
若い夫婦は「家庭という幸せ」を味わい始めていた頃です。
ある朝、出勤する彼を、奥様が三歳になる息子さんを抱いて「お父さん、行ってらっしゃい~」と笑顔で見送られ
たそうです。どこの家庭でも有る風景ですね........
しかし、その日の朝、二人に笑顔で見送られた「幸せの光景」を彼は二度と見ることは出来なかったのです。
40数年たった今も見ることは出来ません.......
何故ならば、その日......奥様とお子様は事故に遭われ一瞬にして帰らぬ人になってしまったそうです。
その日の出来事は、細かく聞くことが出来ませんが、その後の、彼の「魂の抜け殻」と同じような精神状態を伺う
ことが出来ました。
40数年の中で少しずつ、自分なりに「心の整理」ができ、こうして話すことが出来ると.....
大きな瞳で私をじっと見つめて話してくださいました。
その瞳の奥深くにどれだけの「悲しみ・怒り・遣る瀬無さ....」が沈んでいるかが私には十分読み取れました。
自らの命をも失くしてしまうほどの「耐えることの出来ないような苦しみの底」から、よくここまで這い上がってこれ
たことに私は感動し、心揺さぶられました。
穏やかな言葉で丁寧に話される彼を見つめると胸が熱くなりました。
今生で会うことの出来ないご家族が、彼の左の肩越しで微笑んでいるのがわかりました。
心が癒されるまでの40数年、二人は左肩越しからいつもお父さんを見守ってこられたのです。
この地球上で様々な人間が、様々な国で、様々な生活をして人生を過ごしています。
今を大切に、自分を大切に、家族を大切に.......全てを大切に毎日を生きていきましょう。
合掌。
うです。